行政と民間が連携するプロジェクトから見るこれからのまちづくりについて【札幌プレイスメイキング最前線#4】

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官民連携のまちづくりプロジェクトが増えてきているが、行政と民間で共創することで「住民の声を取り入れることができる」以外にどのようなメリットがうまれるのだろうか?

札幌市まちづくり政策局の佐藤さんのインタビューを通じて、これからのまちづくりの形を探究する。

地域の抱える問題が複雑・高度化したことや、市民のニーズが多様化したことを理由として、従来の行政主体ではなく市民主体のまちづくりが求められるようになった。官民が連携したまちづくりプロジェクトは各地にあるが、札幌の大通公園にて行われているプレイスメイキングの実証実験「都⼼まちづくりプラットフォーム公共的空間活⽤プロジェクト」もそのうちの一つだ。

プロジェクトを進めている 札幌市まちづくり政策局都心まちづくり推進室都心まちづくり課 の佐藤さんにプロジェクトの感想を聞いた。

佐藤さん「参加している高校生の方が『自分たちはあまり大通公園に行かない』という意見を挙げていて。そういう率直な声というのは、行政の立場からするとすごく新鮮に感じます。今回のプロジェクトのように年齢、男女問わずの多様なメンバーで意見交換ができることは、今後の方向感を考える上ですごく刺激になっています」

前回の記事でお話を伺った高校生のみなさん

官民連携でまちづくりを行うメリットとして「住民の声を街に取り入れることができる」ということが取り上げられることが多い。これも重要な要素の一つであることには間違いないが、これが全てではない。官民が連携してまちづくりやプレイスメイキングを行うことには、他にも何か意義があるはずだし、活動の中で意味が生まれているはずである。そこで今回の記事では、札幌で行われている官民連携のまちづくりプロジェクト「都⼼まちづくりプラットフォーム公共的空間活⽤プロジェクト」に関わる行政の佐藤さんのインタビューを通じて、これからの官民連携のまちづくりについて考えていく。

佐藤大輔(SATO Daisuke)
札幌市の都心の問題を広く扱い、まちづくりの方向性を考えて実行している「札幌市まちづくり政策局都心まちづくり推進室都心まちづくり課」の職員。その中でも佐藤さんのチームは、作られた都市空間をどのように使っていくかを調整するエリアマネジメントを担当している。
今回お話を伺った札幌市の佐藤さん

行政と民間では持っている資源が異なる

行政の強みとしては、活用することができる公共空間そのものを持っていること、それらに関する制度を運用していることなどがあげられる。制度も固定的なものではないので、必要に応じて柔軟な対応が可能でもある。今回札幌市がプレイスメイキングの実証実験を行おうと考えたのには、都心空間でアクティビティを生んでいくことを通じて、都市の魅力を高めていきたいという想いがあるという。

佐藤さん「行政には想いはあるのですが、それを実現するためのアイデア、行動力、実行力は足りない部分があります。逆に、民間の方は行政では思いつかないアイデアをだすことや、意思決定の速さなどが得意な部分です。このように、お互いの持っている資源を掛け合わせることで、より良いものが生まれると考えています」

7月に行われたプレ実証実験の様子

プラットフォーム(仕組み)を作るためのプロジェクト

大通公園で行う「都⼼まちづくりプラットフォーム公共的空間活⽤プロジェクト」で作ろうとしているものは、官民連携のプロジェクトをこれから札幌で活発に生み出していくためのプラットフォームだ。

佐藤さん「ここで言うプラットフォームというのは、官と民が緩やかにネットワークを作って都心の課題解決にむけて一緒に実証実験や情報交換を行い、その成果を発信することで、札幌の魅力を伝えていくという機能を持った仕組みのことです。官民が連携できるプラットフォームを作ることで、様々場所や組織でプロジェクトが生まれ、結果的に街全体に活力が生まれると信じています」

今回の大通公園のプレイスメイキングを通じて形作っていくプラットフォームは、この先札幌で何かチャレンジをしたいと考えた人たちが「あそこに相談したら、もしかしたら何か実現するかもしれない」と思える、受け皿にもなりえるだろう。

佐藤さん「どんなプロジェクトも、行政、民間を問わずメンバーは流動的に変わっていくものなので、プレイヤーが変わってもプロジェクトが進む仕組みをしっかりと作ることが重要です。逆に言うと、確固たる仕組みが組まれていれば、メンバーが変わってもプロジェクト自体は動かしていけると思うんです。行政と民間が一緒にプロジェクトを行う際に、どんな仕組みだとうまくいくのか、またはうまくいかないのかということを実験的に行ってみて、さらに良い仕組みを作っていきたいと考えています」

実証実験であるということ

上記の仕組みづくりのトライ&エラーの考え方からも分かるように、大通公園で行われる「都⼼まちづくりプラットフォーム公共的空間活⽤プロジェクト」は単にイベントを行うためのプロジェクトではなく、未来につなげるための実証実験であるという部分が大きなポイントだ。

参考:国土交通省「社会実験とは

実は札幌市では2016年頃から継続的に、都心の魅力を高めるためのプラットフォームづくりに取り組んできた。今回大通公園で行っているプロジェクトは、ここまでの一つの成果であり、さらにこれからにつなげるための実証実験なのだ。そして、今回の実験の題材は「公共空間(公園)におけるプレイスメイキング」だ。

公共空間である公園は「都市公園法」をもとに行政が管理している。行政が管理している公園は規制が多く、出来ることが少ないというイメージを持っているかもしれないが、実はそうでもない部分があるという。

佐藤さん「公園で何かをしたい!と思った時には、行政にきちんと許可を取れば、都市公園法やそれに基づく条例の範囲で行うことは可能です。ただ、ルールが『厳しい』という印象を持たれているのであれば、どこに対してどういう手順を踏んで……という、許可の取り方が市民の方にオープンになっていないという課題があるのかもしれないですね。今回、民間の方が主体となって考えた大通公園の様々な使い方を実際の事例としてお見せすることで『官民がタッグを組むとこういう事ができるのか!』と示すことも今回のプロジェクトの価値ですね」

関係部局の政策の方向性をふまえて企画を練る

「都⼼まちづくりプラットフォーム公共的空間活⽤プロジェクト」は実証実験であることから、非常にチャレンジングなプロジェクトとも言える。行政において、チャレンジングな企画を立案し、実行に移すまでには工夫が必要なはずだ。どんな工夫をしているのか佐藤さんに聞いてみた。

佐藤さん「官民はもとより、行政内部でも企画の方向性を合わせること、その意義を理解してもらうことはどんなプロジェクトでも意識しています。今回のプロジェクトでは公園を管理している部局など、他部局との連携は必須になってくるので、自分たちの行いたいプロジェクトの大枠がそれぞれの部局の掲げる政策の方向性にあっているかを含めて企画を考えます。そしてプロジェクトを行う意図や目的を、対外的にも対内的にもしっかりと伝えることが重要だと思っています」

まとめ:市民参加型から共創型へ

改めてになるが「都⼼まちづくりプラットフォーム公共的空間活⽤プロジェクト」は、札幌市を活発にするための官民共同プロジェクトが生まれる「プラットフォーム」をつくるのが目的だ。大通公園で行われる実証実験はその目的を達成するための手段で、結果をもとに改善して次の一歩を踏み出す長期的なプロジェクトなのだ。

官民で取り組むプロジェクトでは行政と市民の「共創」が鍵になると佐藤さんは語ってくれた。

佐藤さん「市民の方の声を取り入れるというよりも、市民の方の『こうしたい』『こうしたほうが良いんじゃないか』というやりたいことを実現するものでありたいと思っています。行政が市民の方から意見を頂戴して何かを作るというのではなく『一緒に作る』という新しいシーンを作っていきたいです」

全米で最も住みよいまち」「環境に最もやさしいまち」といったランキングで上位に選ばれてきたポートランドは、住民の要望を実現させる体験を重ねることで今の街の評価を作ってきた。住民主導で開放的なデザインの公園を実現させるために購買者の名前を刻んだ建設資材のレンガを販売し資金調達を行った事例や、「コミュニティにそぐわない」と反対した駅のデザインに関して住民が自ら代替案を提示しそれを実現させた事例からも分かるように、ポートランドでは住民が自分たちの要望を言うだけでなく主体的に行動を起こして街に関わっている。また、ネイバーフッドアソシエーション(NA)をという住民の声を行政に伝える市の公認組織があるなど、住民がまちづくりの主体となるための仕組みが作られてきた。

今回の「都⼼まちづくりプラットフォーム公共的空間活⽤プロジェクト」を通じて、札幌市民が自分たちの要望を実現させるという経験をし、さらにそれを持続的に行っていくためのプラットフォームが作ることができれば、札幌は今以上に魅力的な街になっていくだろう。

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鷲見 萌夏
PROFILE_

鷲見 萌夏 / ライター

SENSE:D 編集長

1999年北海道札幌市生まれ。上智大学文学部 新聞学科在学中。メディア・ジャーナリズムの勉強をしながら「伝える・伝わる」ことについて考えている。その一環で「ガクセイ基地」「PEACE BOAT DECK」等のウェブメディアで記事を書く。今年のゼミでの研究テーマは、若者におけるラジオの価値を言語化すること。