林匡弘さんインタビュー / 大通公園での実証実験について【札幌プレイスメイキング最前線#2】

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日本でも注目され始めている「プレイスメイキング」について探求をするために、大通公園での実証実験「都⼼まちづくりプラットフォーム公共的空間活⽤プロジェクト」を行っている、札幌都⼼プレイスメイキング実⾏委員会の事務局長 林 匡宏さんのインタビュー。

北海道札幌市にある「大通公園」にて、公園や広場などの公共空間が札幌市民や来訪者にとって利便性や快適性が高く、居心地の良い空間になるために、公共空間のあり方に関して考え、実証実験を行っている「都⼼まちづくりプラットフォーム公共的空間活⽤プロジェクト」

日本でも注目され始めている「プレイスメイキング」について探求をするために、プロジェクトを運営している札幌都⼼プレイスメイキング実⾏委員会の事務局長 林 匡宏さんにお話を伺った。

林 匡宏 (HAYASHI Masahiro)
絵師・まちづくりコーディネーター、博士 (デザイン学)/1983年大阪府吹田市生まれ。札幌、江別、渋谷、広島など各地で都市や地域の将来ビジョンを計画・実践。議論内容をその場でイラスト化する手法を用いながら、公共空間を活用した地域の魅力づくりに挑戦するラガーマン。2019年に江別市内で初となるゲストハウスを開業。 20年、30年先の未来の街ではなく、今そこに住んでいる人達と話していきながら、この瞬間の街を作っていき、そこにいる人が幸せになるような居場所づくりを目指している。 

「プレイスメイキング」とは

プレイスメイキングとは「場」を人々が一丸となって再考し、再構築するためのアイデアを実践的にアプローチすること。それぞれの人が自分らしく、自由に振舞える場所を目指している。公共空間の居心地がよくなり、そこから新しいコンテンツや、賑わい、コミュニティが生まれることで、その「場」が存在する街全体の価値を向上させる。そして、今回紹介する「都⼼まちづくりプラットフォーム公共的空間活⽤プロジェクト」は大通公園を舞台に行われるプレイスメイキングの実証実験だ。

例えば、ニューヨークのタイムズスクエアは、2007年までは車が走る普通の道路だった。週末の実歩行者天国にするなどの社会実験を通じて、歩行者天国にすることのメリットを伝えたことで今のような終日歩行者天国であることが実現した。このように社会実験を通じて新しいルールを作ったり、何か制度や状況を変えるチャレンジをしたりするのがプレイスメイキングなのだ。

官民が一緒にプロジェクトに取り組む理由

「都⼼まちづくりプラットフォーム公共的空間活⽤プロジェクト」は官民がタッグを組んで行っているプロジェクトだ。プレイスメイキングは行政が管理をしていて、様々な制限のかかっているパブリックスペースで行うことが多い。ルールや条例の柔軟な運用なども必要になってくるため、プレイスメイキングは民間のプレイヤーが一方的に進めていくのではなく、行政とともに考え進める必要がある。

「最近では河川法や公園法、道路法などが変わってきていますが、自治体や行政はまだそれを使いこなせていないという現状があります。逆に、民間の人が場所活用のアイデアを持っていても、それを制度の中でどう実行していけばいいのかのノウハウがないこともあります。なので、常に街のことを考えている行政と、アイデアを持っている民間とがタッグを組んでともに進めていくのがとても大事です」。

札幌都心プレイスメイキング実行委員会には、大企業の社員、フリーランスで仕事をしている人、グローバルに活動をしている人、ローカルに特化して活動している人、本やカフェ、アートや音楽など文化的なものに詳しい人、ビジネスや経済界に強い人、コワーキングスペースの運営をしている人、教育関係者など、様々なジャンルの第一線にいる人たちが集まっている。

「札幌都心プレイスメイキング実行委員会のメンバーは、みんなそれぞれ社会に対して熱い思いを持っていて何かをしたいと思っている人たちです。年齢や性別、立場に関係なく、それぞれのやりたいことに挑戦できる場があったらいいなと思っているので、このプロジェクトを通じて札幌という街全体がそうなるためのきっかけにしていきたいです」。

札幌の都心にある「大通公園」でのプレイスメイキング

「都⼼まちづくりプラットフォーム公共的空間活⽤プロジェクト」の舞台となる大通公園は、この先のあり方を問われるフェーズに来ている。

大通公園は日本で都市公園法が制定される前年の1955年に完成している。そのため、日本がこれからこの制度のもとで公園を作っていくということを発信するためのロールモデルとして作られた公園だと言われている。現在、大通公園では、雪まつりやYOSAKOIソーラン祭りをはじめとし、1年を通してイベントが開催されており、自由に過ごすことのできる期間が非常に限られている。

「イベントを開催していることで、イベントを運営している会社の利益にはなりますが、それが本当に市民のためとなっていると言えるのか?と考えています。単純にイベントをやって利益を出すためではなく、市民の暮らしの中でどのような役割を果たすのか、ということを考えていくことがとても大事になってくると思います」。

まさに「市民のための公園」というあり方を考える必要がある。

大通公園でこのプロジェクトが行われる意義は他にもある。今までもまちづくりに関するワークショップなどは開催されてきたが、そこで出たアイデアの実現には至っていない。この状況を変えるためにも札幌のシンボルである「大通公園」で行う意味は大きい。

「社会全体に関わるまちづくりを成功させるには『感動体験』が鍵になるのではないかと考えています。行政も民間も同じ熱量で取り組んだ企画を打ち出して、作っている人も参加した人も猛烈に感動したら、それが常設化するなどまちづくりが進むと思うんです。なので、札幌市の中でも目立つ大通公園でやる意味はとても大きいです」。

プレイスメイキングの課題を解決する

公共空間のプレイスメイキングの現状は、何かが決まる過程がブラックボックスとなっており、意思決定が市民と遠いところで行われているという課題を抱えている。

しかし、今回の大通りのプロジェクトでは大通公園の活用方法について誰でも意見を出してもいいことになっている。そこで出た様々な意見や要望を整理し、行政と一緒に実現に向けて動いていくのが実行委員会の役割だ。この「誰でも意見を出せる→実行委員会がそれをまとめる→行政と一緒に実現に移す」という仕組みを作ることそのものが「都⼼まちづくりプラットフォーム公共的空間活⽤プロジェクト」の意義でもある。

「本来、公共空間である公園は市民全員のものなので、市民の人が行政の人たちと一緒に考えて、自分たちのための公共空間のあり方を考えていくのが理想だと思います。大通公園という札幌の中でも大きな意味を持つ場所で行う今回のプロジェクトを通じて、札幌を官民がオープンに意見を出し合って何かを生み出すというのが当たり前の街にしたいです」。

最後に、林さんにこの記事を読んでいる人に伝えたいことを聴いた。

「プレイスメイキングは誰でも参加できるものです。この場所がこういう風になったらいいなと思うことは誰でもできるので、それをコーディネートする仕組みさえあれば、色んな人が参加してチャレンジできることだと思います。今回の『都⼼まちづくりプラットフォーム公共的空間活⽤プロジェクト』では札幌都心プレイスメイキング実行委員会がコーディネートする役目を果たしているので、よかったらぜひ皆さんも参加してみませんか。連絡待ってます!」

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(サムネイル / インフォグラフィック:泉田剛)

鷲見 萌夏
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鷲見 萌夏 / ライター

SENSE:D 編集長

1999年北海道札幌市生まれ。上智大学文学部 新聞学科在学中。メディア・ジャーナリズムの勉強をしながら「伝える・伝わる」ことについて考えている。その一環で「ガクセイ基地」「PEACE BOAT DECK」等のウェブメディアで記事を書く。今年のゼミでの研究テーマは、若者におけるラジオの価値を言語化すること。