高校生と大人が共創する公園づくりから考える、プレイスメイキングが都市にもたらす価値とは【札幌プレイスメイキング最前線#3】

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プレイスメイキングに市民、特に若い世代が参加することでどんなメリットがあるのか?これからまちづくりはどのように変わっていくのか?
地元の高校生が参加している札幌・大通公園でのプレイスメイキングの実証実験を通じて、これからの都市の作り方について考える。

札幌の大通公園にて行われているプレイスメイキングの実証実験「都⼼まちづくりプラットフォーム公共的空間活⽤プロジェクト」。

このプロジェクトに札幌新陽高校札幌日本大学高校の学生が参加し、大通公園をどんな風に活用したいかを考え、プレゼンを作っている。実際に彼らが考えたアイデアは、大通公園内で仕事や勉強のできるワークスペースの設置構想など、自分たちの「ほしいもの」の実現を目指している。

高校生がこのプロジェクトに参加することから見えてくる、新しい都市の作り方とは?

プレイスメイキングの意義

「プレイスメイキング」とは、あらゆる環境がすべての人にとって居心地が良くなるよう、再構築するためのアイデアであり、実践的なアプローチのことだ。ただの「場づくり」ではなく公共空間の居心地がよくなることで、そこから新しいコンテンツや、賑わい、コミュニティがうまれ、その「場」が存在する街全体の価値の向上を目指す、生活の質を高める場所づくりの概念である。

公園を管理しているのは市区町村などの行政のため、新しい遊具の設置やイベントを行うなど、公園に関する意思決定は市民ではなく行政が行うことが多かった。そのため、公園運用の実情と市民が公園に求めているものとの乖離が起きやすい。

冒頭でも少し紹介したが「都⼼まちづくりプラットフォーム公共的空間活⽤プロジェクト」に参加している札幌日本大学高校の学生に「大通公園にはよく行くのか」と聞いてみたところ、あまり行かないという答えが多く、行くとしてもイベントが開催されている時のみで、後は通り過ぎるだけという人が多かった。

「今の大通公園は『大きい公園』というイメージしかなくて、自分にとってはあんまり魅力的な場所じゃない」という回答があり、大通公園は「何かをしたい」という市民の欲求を満たす場所ではないという現状が見えてきた。

公園を管理しているのは行政だが、公園は「公共」空間である。市民のために存在していて、市民全員のものであるならば、行政だけで意思決定をするのではなく、市民自らで考えて実行しようというのがプレイスメイキングという概念だ。

プレイスメイキングに参加することで「当事者」になる市民

アメリカに「全米のすべての子どもたちにバランスのとれた遊ぶ機会を」をビジョンに掲げるNPO団体「KaBOOM!(カブーム)」がある。

ここは1995年から活動を始め、2021年までに17万以上の公園を作ってきた団体だ。1つの公園を作るのに半年以上の時間をかけ、一部を地元住民が負担する形で行う資金調達、材料もできるだけ地元企業から提供してもらうなど、とことんその地域の人が公園づくりに関わっていく。

極めつけは、どんな公園にしたいかを子どもたちと一緒に考えたのち、数百人の住民のボランティアが総出で作業をしてたった1日で公園を完成させてしまう。

市民が公園づくりに関わることで、その場所の当事者になる。そうすることで、公園が完成した後も愛着を持った状態で運用・運営にも関わるので、その公園を市民が自分たちで動かし続けるという正の循環が生まれる。

市民が支える公園「High Line」

アメリカ・ニューヨークにある廃線になった鉄道の高架を利用して作られている公園「High Line」。当初は治安の悪化などで高架の撤去が決まっていたが、撤去に反対する近隣住民がNPO「Friends of the High Line」を立ち上げ、再開発を訴える活動を始めた。高架を活用することで経済効果をもたらすことを実証する調査結果の公表や、再開発のための寄付金集めなどの地道な活動を通じて、High Lineは2009年に公園として生まれ変わった。今では年間500万人の来場者数を誇る人気スポットになっている。

ちなみに「Friends of the High Line」は緑道など公園の維持管理費確保のために、TシャツやステーショナリーなどのHigh Lineグッズの販売を行っている。High Lineに愛着のある人たちがそのグッズを購入し、それを身につけて公園を訪れる。

グッズという形でHigh Lineの愛着を可視化することで、公園を支える「当事者」を増やしているのだ。グッズの他にも寄付金やボランティアで公園の運営に関わるなど、公園に関わり当事者が増えるほどに公園の運営は安定していくので、当事者の増加は公園がさらにより良い場所へと成長していくきっかけとなりえるのではないか。

若者がまちづくりに参加すること

ここまで「市民がプレイスメイキングに参加する意義」について考えてきたが、ここからは参加する市民が「若者」である必要性はあるのだろうか?ということに焦点を当てていく。

プレイスメイキングに市民が参加する意義があるからこそ、多くの年代の市民に参加してもらうことが重要である。その点でも若者が存在することに価値があるというのは想像に容易い。

繰り返しになるが、プレイスメイキングに参加することで、市民はその場所に対して「利用者」という立場から「当事者」という立場に変化する。言い換えると若者が受け身ではなく、能動的に社会に関わっていくことができるのだ。

さらに、若者はプレイスメイキングを通じて「自分たちのものを自分たちで作る」ことを学んでいる。実際に「都⼼まちづくりプラットフォーム公共的空間活⽤プロジェクト」のプレイスメイキングに参加している高校生からは

「元々、自分で何かを一から考えるのが苦手で、誰かがこうしたらいいよと言ってくれたことに流されて生きてきました。このプロジェクトを通じて『自分で何かを考える』という経験ができたのがすごく良かったなと思います」

「今までは自分で0から作るのは苦手だったけど、他の人の発表を聴いたりする中で『こうしたらいいんじゃないか』というアイデアがたくさん出るようになりました」といった話を聞くことができた。

札幌日本大学高校の学生さんたち

プレイスメイキングに参加したことをきっかけに、アイデアや意見を出すことで「自分たちの欲しいものを自分たちで作る」という経験やノウハウを若者が獲得する。10年、20年後にその世代が社会の中心になる時代が来た時、その社会は今よりもずっとクリエイティブになるのではないか。これを踏まえて考えると、若者がプレイスメイキングに参加することは未来の社会がよりよくなるための投資なのかもしれない。

まとめ:まちづくりのネクストステップは、市民を「参加者」から「当事者」へ変容させること

日本国内のプレイスメイキングの事例でいうと、静岡県沼津市にある泊まれる公園「INN THE PARK」や佐賀県杵島郡江北町にある「みんなの公園」のように市民が関わるプロジェクトも増えつつある。札幌・大通公園で行われている「都⼼まちづくりプラットフォーム公共的空間活⽤プロジェクト」もその一つだ。

上記で紹介したように多くの市民、特に若者がプレイスメイキングに関わり、自分たちのまちを自分たちでアップグレードしていくことは、未来の社会がよりよくなるための投資になりえる。

ただ、現状は市民が説明会や意見交流会、ワークショップに「参加」することで、市民がプレイスメイキングに関わるという形が多い。市民参加型のプレイスメイキングのプロジェクトが増えてきたからこそ、今後は市民が「参加者」から「当事者」に変わるような仕組みを作ることが必要になってくるのではないか。

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鷲見 萌夏
PROFILE_

鷲見 萌夏 / ライター

SENSE:D 編集長

1999年北海道札幌市生まれ。上智大学文学部 新聞学科在学中。メディア・ジャーナリズムの勉強をしながら「伝える・伝わる」ことについて考えている。その一環で「ガクセイ基地」「PEACE BOAT DECK」等のウェブメディアで記事を書く。今年のゼミでの研究テーマは、若者におけるラジオの価値を言語化すること。