「2021年、私たちは選挙とどう向き合うのか」イベントレポート

SUMMARIZE:D

社会的な立場や、政治に対する関わり方が三者三葉のゲストが、選挙や政治に対して思うことなどをテーマにトークセッションを行った。この記事ではそのイベントの内容を通じて、選挙にどう向き合うべきなのかを改めて考える。

選挙に行く意義は「選挙は主権者として政治に意思を反映させることのできる重要かつ基本的な機会だから」というような説明で済まされてしまうことが多い。そこでSENSE:Dでは民主主義において選挙の意義を問い直すプロジェクト「2021年、私たちは選挙とどう向きうのか」を行っている。

その一環で、サツドラホールディングス株式会社 / 代表取締役社長 兼 CEO 富山 浩樹さん、ボーダレスハウス株式会社 / ビジネスディベロップメント 山本 梨子さん、そして今年選挙権を得たばかりの大学生 川口優奈さんをゲストにしたオンラインイベント「2021年、私たちは選挙とどう向き合うのか」が開催された。社会的な立場や、政治に対する関わり方が三者三様のゲストが、選挙や政治に対して思うことなどをテーマにトークセッションを行った。この記事ではそのイベントの内容を通じて、選挙にどう向き合うべきなのかを改めて考える。

選挙に関する情報にどうアクセスするか

大学生の川口さんにとっては今回の衆議院議員選挙が選挙権を持ってから初めての選挙。どのように選挙やそれに関する情報と向き合って行くと良いのかという話からトークセッションが始まった。川口さんは両親や学校の先生など身近な人と話す中で選挙に関する情報を集めているということだったが、社会人のお二人はどのように選挙と向き合い、情報を集めているのかを伺った。山本さんはメディアを上手く使うことで情報を集めていると話してくれた。

「自分から情報を集めにいくというよりは、新聞やニュース番組、選挙に関するまとめサイトなど、既に情報がまとめられているものにアクセスして、誰がどんなことを言っているのか情報を集めています」

富山さんは普段からSNSなどを活用して、立候補者の発言や社会問題解決に対してどのような議論がなされているか、どんな意見があるのかをチェックをしている。

「多くの人がそうだと思いますが、全ての社会問題とそれに対してどんな議論がされているかを知っている訳ではありません。詳しい人同士の議論の様子などを見ることで、自分が詳しくない問題に対しての議論の流れなどを把握するようにしています。自分に意見が近い人がどんなことを言っているのを確認するのももちろんですが、あえて反対の意見の人もSNSでフォローするように意識しています。そうすることで色々な角度から社会問題を考えることができると思っています」

SNSを使用している政治家や立候補者が増えてきていることで、その人がどんな意見を持っているのかを本人の発信で知ることができるようになった。また、政策のまとめサイトや自分に合う政党の診断ツールの登場など、インターネットの発達によって選挙に関する情報が集めやすくなっている。それらのツールを上手く利用することで、選挙に対する情報を集めることができると良いだろう。

若者が政治に関心を持つために

小さい頃から家族で選挙の話をするなど、選挙に対しての意識が高い川口さんでも、選挙の意義は理解できるが選挙に対して実感が持てないと言う。日本財団が行っている18歳調査では、日本の若者は「自分が社会の一員である」という意識が他の国の若者と比べてとても低い。昔から言われている「若者の政治離れ」に関しても改めて考えた。

選挙はその結果によって社会が変わる。社会がどう変わるのかということは枠組みが大き過ぎて、自分の身近な所に課題を結び付けないと選挙の意義などを実感することができず選挙に行くことが目的になってしまうのではないか。富山さんは、選挙に関心が持てるかということの前に、社会に関心を持てるかということがまず第一歩だと思うと語る。

「社会システムとしてこういう課題の原因がここにあるという話をしても実感が持てないと思う。自分や自分の周りの人が困っていることに対して、それはなんで起きているんだろう、どうすれば解決するのだろうと、身近な人の困りごとの原因を紐解いていくことで、政治につながっていくんだと思います。政治から考えるというより課題から社会の仕組みを考えるのが良いかと」

自分の身近な話題をきっかけに選挙や政治に関して興味を持つことができるということに関して、山本さんも実体験を交えて語ってくれた。

「環境問題やエネルギー政策に関心があるのですが、それを意識し始めたのは自分に子どもが生まれたことでした。地球は自分の子どもや、さらにその子どもという未来の世代から借りているものなんだということに気がついてはじめて、環境問題に目を向けられるようになりました。ですので、社会課題を自分の身近なものとして考えられるかが、政治や選挙に関心を持てるかの鍵だと思います」

デジタルネイティブ世代は社会問題に対しての関心が高い世代である。社会問題への関心を深めて、選挙や政治の関心につなげていくことで、若い世代にとって選挙や政治が身近になっていくのではないか。

社会課題解決のための選挙

選挙にいかない理由として「自分の一票ではどうせ何も変わらない」という諦めがあるとよく言われるが、例え票を入れた政党が当選しなくても、投じた一票は無駄ではないと山本さんは語る。

「投票結果を通じて、この意見の人がこのくらいいるんだなっていうのを示せたら、例え当選しなくても議論の方向性が変わっていくこともあると思います」

実際にドイツなどでは、少数政党が議席を伸ばしたことの意味を考え、与党が政策の方向を変えた例がある。選挙は最終的な結果だけでなく、どのくらいの人がどこに投票したかということもその後の政治の方向性に影響を与えるので、一票が無駄になるということはない。

投票先の選び方

上記でも述べたように、選挙は自分の興味関心のある社会問題に関しての自分の意見を間接的に示す場になりえるが、実際には自分の考えと一致している立候補者がいない場合もある。そのことも踏まえたうえで、どのように投票先を選べばよいのだろうという事を富山さんに伺った。

「ある社会問題の解決のために100%自分と同じ考えの政策を掲げている立候補者がいることはほとんどありません。こういう発言をしているこの人なら、こちらの方向性に議論を進めてくれるだろうといったような、大枠の方向性やベクトルを基準に投票先を選んでいくと良いと思います」

選挙は自分自身の興味関心のある社会問題を、議会のアジェンダにあげる役割がある。このことを意識して公約を確認し、どの方向性で議論を進めたいかということを基準に投票先を選ぶと良いだろう。

現議員や立候補者に要望などを伝えていくには?

投票先の公約に議論の方向性を託すといっても、そもそも提示してある公約がどれもピンと来ない場合もある。そうした時に、自分たちの意見や要望をどのようにして政治家に伝えていけば良いのだろうか?

政治家は国民から「どうみられているのか」が重要であるので、SNSなどで意見を拾うこともあるという。SNSなどを活用している政治家も増えてきたので、デジタルを上手く活用することで直接意見を伝えることも可能だ。さらに山本さんは間接的に意見を伝えることもできると考えていた。

「環境活動家などのSNSを見ていると、パブリックコメントなどを集めて政治家の方に意見書を届ける活動をしている方もいるので、活動家の方を通じて間接的につたえることもできると思います」

最近では、オンラインで署名を集めるツールを活用しながら、政治家に意見を届けようと活動している人や団体も増えてきている。選挙だけでなくそういった活動への参加を通じて政治に対して意見表明をすることも可能だろう。

政治に不信感がある

イベントの最中には、参加者から「政治に対して不信感があるのだが、どう政治に向き合えば良いか?」という質問があった。富山さんは、そう思ってしまうのも仕方がないと賛同しつつ、こんなアドバイスをくれた。

「当選しないと自分たちのやりたいことができないという部分で、政治家にとって選挙が大事なのは事実なので、選挙に力が入るのも当然です。政策をふまえて投票先を決めるのはもちろんですが、そこにさらにこの人なら言ってくれたことを守るだろうというような人柄もふまえて投票先を選んでみてください」

山本さんは選挙で投票先を責任をもって選ぶこと、選んだ人のその後をWatchするのはもちろんだが、ある程度信頼して任せてもいいのではと考えている。だが、政治に頼らずともできることはあるとも語る。

「一人の消費者として、日々の選択の中でどのような選択をしてくかという事で社会を変えていくこともできると思います。自分は割と消費者のパワーを信じているので、政治だけに頼るのではなく、自分達の行動から社会を変えていくということは日々考えています」

どうしたら若者は政治への参加意識を持つ?

大学生の川口さんから、自分は選挙に行くことは政治に参加する手段だと思っているので政治に参加することを選ぶが、選挙に行かないという同年代も多いという話が出た。シルバー民主主義と呼ばれる政治の方向性など、現代は若者が選挙に対して希望感を持ちにくい。その中でどうしたら選挙に行くことの同世代と共有できるのだろうか。

富山さんは若者にチャンスが訪れる時期がくると考えている。そのタイミングが2025年だ。2025年には現在日本の人口の中で最も割合の多い団塊世代が後期高齢者となり社会的活動が減っていくと言われている時期だ。

「人口統計的にも2025年には今の若い人たちが社会を動かしてく世代の中核を担うようになると思います。今は僕の世代も含めて、シルバー民主主義に対する絶望感があるかもしれないけれど、みなさんの世代が社会の中心になるタイミングが近いうちに訪れるので、今は前哨戦だと思って、政治のこととかを考えて見て欲しいです」

山本さんは、興味関心のある人達が積極的に議論や活動をすることで、その波を少しずつ広げていけたらと考えている。

「これは選挙に限った話ではないのですが、興味を持っていない人に行動を促すということはすごく難しいのではないかと思います。ただ、現状興味がなくても何かのきっかけで関心をもつという事は全然あると思うので、今興味を持っている人が議論をしたり活動をすることで種まきをしていくのがいいのではないかと思います。」

まとめ:どう選挙に向き合うのか

今回のオンラインイベントの中でたびたび話に上がっていたのは「選挙や政治という大きいものを、身近な問題と結びつけて自分事として考えることが重要」ということだ。選挙、政治というとものすごく大きな枠組みに感じ、自分と遠いところで行われているものという印象になりがちだ。しかし、実際には私たちの生活の延長線上に政治という大きい枠組みがあり、生活と結びついているものである。そのことをふまえて考えてみても、選挙に行くことを目的にするのではなく、選挙の意義とは何か、行った先にどうなるのかなどを考え、納得感を持った上で選挙に行くことができたらと思う。

10月31日に衆議院選挙が行われる、イベントの中でも話があったがこの選挙を通じてどんなアジェンダを議会に提示し、どの方向性で議論を進めて欲しいのかを意思表示するまたとない機会であるので、ぜひ足を運んでみてほしい。

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鷲見 萌夏
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鷲見 萌夏 / ライター

SENSE:D 編集長

1999年北海道札幌市生まれ。上智大学文学部 新聞学科在学中。メディア・ジャーナリズムの勉強をしながら「伝える・伝わる」ことについて考えている。その一環で「ガクセイ基地」「PEACE BOAT DECK」等のウェブメディアで記事を書く。今年のゼミでの研究テーマは、若者におけるラジオの価値を言語化すること。