日本企業のデジタルネイティブに向けた施策が「欧米を参考に」は大きな間違いかもしれない

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日本のデジタルネイティブは、世代交代とともに社会の中心にはなっていくが人口的にマイノリティのため、欧米のデジタルネイティブとは状況が大きく異なる。そのため、既存の情報以上に日本のデジタルネイティブについて本質的に理解する必要がある。

 一般的に「デジタルネイティブ」とは生まれたときからインターネットやソーシャルメディアに慣れ親しんでいる世代のことだと言われている。Google検索で「デジタルネイティブ」と検索すると、誰のことを指し、どんな特徴があるのかという情報を掲載しているウェブサイトが多い。2021年現在、デジタルネイティブが成人を迎え消費行動に関わるようになってきたと言われている。これからの市場を作っていくデジタルネイティブの価値観に寄り添ったサービスを展開したいと考えた時に、彼らの生態を知りたいと思う人が多いのだろう。しかし、本当に日本のデジタルネイティブは社会の中心となり、市場を動かす存在となりえるのだろうか。世界的に見るとデジタルネイティブ世代はマジョリティだが、日本ではデジタルネイティブ世代はマイノリティである。ここでは社会に対して圧倒的な影響力を持っている米国の若者の状況と比較して、日本のデジタルネイティブ世代の生態を理解する一助としたい。

米国のデジタルネイティブ

 米国の国勢調査局が発表したデータによると、2019年7月の時点で現在ミレニアル世代(1981-1996年生まれ)、Z世代(1997-2012年生まれ)、ポストZ世代(2013年以降生まれ)のいわゆる「デジタルネイティブ世代」が人口の50.7%を占め、全米の人口の半数以上である。Z世代だけを見ても全体の20.3%いる。アメリカのデジタルネイティブ世代は、白人の割合が世代人口の半数をやや上回る 51.5%に留まり、ヒスパニック系人口(世代人口の 4 分の 1)を中心とするマイノリティの存在感が増した多様性に富んだ世代だというデータもある。

 彼らは2020年5月からのBlack Lives Matter(BLM)運動のメインの担い手として、SNSを駆使しながら積極的にデモに参加し社会に働きかけた。また、2020年の大統領選挙でバイデン氏が勝利した大きな要因として、タフツ大学のCIRCLEは、多様性に富んたデジタルネイティブ世代がバイデン氏を支持していたこと、2016年には45%だった18〜29歳の投票率が今回の選挙では53%に伸びたことを挙げている。以上の例のように、人口的にマジョリティであるだけでなく、実際に彼らの行動で社会を動かした経験があることからも、米国のデジタルネイティブ世代はこれからの社会の中心になっていく存在だと言えるだろう。

日本のデジタルネイティブ

 日本の総務省が発表しているデータによると、2019年10月1日でミレニアル世代(1981-1996年生まれ)、Z世代(1997-2012年生まれ)、ポストZ世代(2013年以降生まれ)が占める割合は人口の38%だ。Z世代単体では13.91%に留まる(日本の○○世代という呼び分けは年代が被っている時期があるため、この記事での世代の分け方は米国の基準に準じる)。原田(2010)は、韓国ドラマ「愛の不時着」、タピオカ、英人「香水」の様にZ世代に流行ったことで全世代に流行が広がっていくというように、Z世代が消費トレンドに関わっていると主張している。Z世代≒デジタルネイティブが世間の流行を作っていることは事実だが、日本ではデジタルネイティブ世代がマイノリティであることも事実だ。

市場の中心にいる人の変化

 これまで日本においてマーケティングの中心だったのは「アクティブシニア」と言われる65~75歳のいわゆる団塊世代だ。平成の30年にTVで健康番組が増えたのもこれらの世代がTVのメインターゲットとなっていたからである。しかし、戦後すぐに生まれた団塊世代の人達が後期高齢者(75歳)になることで、日本の医療や介護などの社会保障費の急増・崩壊が予想されている「2025年問題」と言われるように、これらの世代がいつまでも消費を続けることができるわけではない。そこで市場のメインターゲットとなる存在として、注目が集まっているのがデジタルネイティブ世代だ。

 前述のように米国では、現段階で若者世代が過半数を越えている上に、これからも増加していくことが予想されている。そのため、マーケティングのターゲットを若者に変えるだけで企業は今までと同じかそれ以上に成功することができるだろう。だが日本ではデジタルネイティブはマイノリティだ。つまり、就職活動で「売り手市場」と言われているのと同じように、ものはたくさんあるもののそれを買う人が少ないということだ。そのため、なんとなくの理解で今までと同じ方法でマーケティングを行っているだけだと、デジタルネイティブには刺さらない。そのため、もっとデジタルネイティブのことを本質的に理解をする必要があるだろう。

 ネットで検索すれば「デジタルネイティブ」に関する様々な情報を集めることはできるが「デジタルネイティブ」「ミレニアル世代」「Z世代」と定義が混ざっているものが多く情報にぶれが生じている。現状「デジタルネイティブ」という世代の生態を正しく伝えているメディアはウェブ上に存在していないのではないか。

 そのため、編集部全員がデジタルネイティブ世代の「SENSE:D」では、日本のデジタルネイティブの生態・現状について理解を深めるためには、彼らとともに行う知の探索がより重要になると考え、デジタルネイティブ世代との探究プロジェクトの推進を加速させようとしている。

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鷲見 萌夏
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鷲見 萌夏 / ライター

SENSE:D 編集長

1999年北海道札幌市生まれ。上智大学文学部 新聞学科在学中。メディア・ジャーナリズムの勉強をしながら「伝える・伝わる」ことについて考えている。その一環で「ガクセイ基地」「PEACE BOAT DECK」等のウェブメディアで記事を書く。今年のゼミでの研究テーマは、若者におけるラジオの価値を言語化すること。

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