日本の若者の中からグレタ・トゥーンベリのような社会運動家は生まれるのか?

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日本のデジタルネイティブはSDGsなどの社会問題に興味はあるものの、海外の若者のように実際に社会を動かす存在にはなりえないと考える。そのため、日本の若者に社会を変えるのを期待するのではなく、彼らに社会との接点を作り、社会課題が横にある体験をさせるべきである。

 グレタは言わずともしれた環境活動家で、2003年生まれの彼女はデジタルネイティブ世代である。彼女の登場に代表されるように、今の若者は環境問題などの社会問題に興味があると言われている。電通の調査によると10代のSDGs認知率は70%を超え(10代男性75.9%、10代女性72.2%)、20代も約半数以上の人(20代男性60.1%、20代女性49.8%)がSDGsのことを知っていると回答している。広島大学の研究によれば、就職活動においてもSDGsに積極的に取り組む企業が支持されるということからも、デジタルネイティブ世代の関心の高さがうかがえる。

 しかし、本当に日本の若者はSDGsなどの社会問題に対して積極的にアクションを起こす文化があると言えるのだろうか?答えは否だと考える。海外には社会活動家としてTikTokなどのSNSで同世代に支持されている存在が多くいるが、20代の日本人でそのような人物をあなたは思い浮かべることができるだろうか?日本のデジタルネイティブ世代がSDGsや社会問題に興味を持ちつつも、実際の自分の行動に移していないのは、社会に対して諦めのような感情を持っているからだと考えている。

社会」を肌で感じることができる海外

 デジタルネイティブ世代の若者が社会を動かした例として記憶に新しいのがBLM(Black Lives Matter)だろう。今回の運動の大きな特徴としては、担い手がデジタルネイティブ世代だったこと、インスタグラムのSNSを利用して行われていたことがある。インスタグラムにおいて「#BLM」が付いた投稿は881.4万件にも上る。ここまでBLMが海外の若者の中で広がっていったのは、人種差別問題を日常的に感じているからだと考える。

 アメリカのデジタルネイティブ世代は、白人の割合が世代人口の半数をやや上回る 51.5%に留まり、ヒスパニック系人口(世代人口の 4 分の 1)を中心とするマイノリティの存在感が増した多様性に富んだ世代だというデータがある。BLMに例えると、身近に黒人の友達がいて、本人やその家族が人種を理由に不遇な目にあっているという話を聞いたことがあるということだろう。実際にYuboの調査によると、米国の若者(13~25歳)の88%がアフリカ系アメリカ人は他の人々とは異なる扱いを受けていると感じている。つまり、海外のデジタルネイティブは、自分達の生活と社会が繋がっているのだ。

自分達が社会を動かす存在であると認識していない日本のデジタルネイティブ

 日本財団が行っている「18歳調査」によると「自分は責任のある社会の一員だと思う」と答えた日本の若者は44.8%だった。この調査は日本を含む9カ国で行われているが、他の8カ国で「思う」と答えている割合が軒並み80%を越えていることを考えると、日本の若者は自分が社会の一員であるという感覚を持っている人が少ない。また「自分で国や社会を変えられると思う」と回答した人は18.8%で、残る8カ国で最も低い韓国の半数以下にとどまっている。他の「自分を大人だと思う」「将来の夢を持っている」「社会課題に関して家族や友人と積極的に話している」も途上国、欧米先進国のいずれと比べても数字の低さが際立っている。

 さらにこの調査を読み進めていくと「自分の国の将来はどうなると思うか」の質問に対して「良くなる」と答えた日本の若者はたったの9.6%に留まる。しかし「どのようにして国の役に立ちたいか」という質問の回答で「国の役には立ちたいと思わない」と答えた人の割合は9カ国中トップの14%である。「具体的にはないが何らかの分野で役に立ちたい」と問題解決の方法を持っていない人の割合は12.4%でこれも9カ国中トップだ。

 この調査を通じて浮かび上がってきた日本のデジタルネイティブ世代は、自分達がアクションを起こしても社会は変わらないという諦めを抱いているように感じる。米国の若者と比較して考えるならば、BLM運動のように人種差別問題が一歩前進したという経験や、国のトップを決める選挙において「自分達の一票で結果が変わる」という実感を持つことが難しいのだ。

社会と接続されていない日本のデジタルネイティブ

 ここからは少し個人の経験則になるが、自分が高校生だった時は学校と家が自分の世界の全てだった。学校で自分の居場所がなくなること=社会的な死だったため、みんなに好かれるようなキャラを作り、クラスの中でポジションを確立することに必死だった。TwitterやInstagramなどのSNSを使ってはいたものの、フォローし合っているのは学校の知り合いのみで、現実のコミュニティと何も変わらなかった。「みんな同じ」ことが良いこととされていて、違うものは排除される学校が自分の社会の全て。息苦しかった。これは私の経験だが、同じことを感じている同年代は少なくないと考える。つまり、日本の若者は「社会」と自分の生活が繋がっていることを実感する機会が海外と比べて圧倒的に少ないのではないか。

まとめ:日本のデジタルネイティブ世代に社会との接点を作っていく必要性

 環境活動家のグレタや、各国で様々な問題に対してSNSなどで発信をしているインフルエンサー達と同じように、日本のデジタルネイティブ世代もSNSを使って社会に訴えかけ、行動を起こすことはできるはずだ。もちろん日本にもSDGsなどの社会問題に対して真剣に取り組み行動を起こしている人達はいるが、社会全体を動かすムーブメントにはなっていない。

 そしてその原因は、日本のデジタルネイティブ世代の多くが「自分達がアクションを起こしても社会は変わらない」という諦めを抱いていることや、若者のリアルな生活と社会が結びついていないという点にあると考える。そのため、今、日本の社会がするべきなのは「SDGsなどの社会問題に興味を持っている若い世代が社会を良くしてくれる」と若者に期待をすることではないのではないか。それよりも、日本のデジタルネイティブ世代に社会との接点を作っていき、社会課題が横にある体験をさせることではないか。

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鷲見 萌夏
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鷲見 萌夏 / ライター

SENSE:D 編集長

1999年北海道札幌市生まれ。上智大学文学部 新聞学科在学中。メディア・ジャーナリズムの勉強をしながら「伝える・伝わる」ことについて考えている。その一環で「ガクセイ基地」「PEACE BOAT DECK」等のウェブメディアで記事を書く。今年のゼミでの研究テーマは、若者におけるラジオの価値を言語化すること。

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