Z世代の伝統芸能はTikTok!?意外な共通点とは。

この夏、「対決落語」というSNSドラマの監修を担当させていただいた。
ビートに乗せて30秒間の即興落語を演り、最後に小拍子を打ってオチを言う架空の競技「対決落語」が流行している世界線を描いた青春ドラマなのだが、最初お話をもらった時は正直とても困惑した。

何故なら本来落語というのはマクラから始まり起承転結オチまで揃って、長い噺だと1時間以上、短い噺でも10分はかかるものなのだ。
それを30秒で完結させるなんていくらなんでも流石に難しい。
全演者全エピソード分の落語を作ることになったのだが、これが想像以上に時間のかかる作業で、脚本家や監督と毎日6時間以上Zoomを繋ぐ生活が始まった。あれこれ考えた結果、ラップの要領で韻を踏みつつ七五調で落語らしい緩急を演出、小拍子を打ってビートが止まり、間をもってからのオチを聴いてスッキリする30秒の新しいエンタメが完成した。

対決落語(TikTokへ移動)

ではそもそもなぜ30秒に収めることになったのか。

SNSドラマ自体1話10分程度の作品が多く、作中で何席も落語を演るには短く作るほかなかったという事情はあるのだが、それ以上に落語単体でTikTokに投稿した際の視聴継続率を意識した。
近年、我々Z世代に面するエンタメコンテンツは短尺化の一途を辿っている。
中でもTikTokは平均視聴継続時間がおよそ15秒程度、30秒のコンテンツの視聴継続率が50%あれば上々と言われるほど極端に短尺な市場なのだ。

つい最近までエンタメ業界では「可処分時間の奪い合い」がトレンドワードに上がるほどインターネット上でのコンテンツ合戦が加熱していた。
その中で圧倒的勝者が生まれると思われていたが、結果としては特定のプラットフォームやコンテンツが市場を寡占することはなく、多ジャンルに細分化されコンテンツは短尺化していった。

「可処分時間の奪い合い」ではなく「可処分時間の分け合い」に向かったのだ。

そんな市場に10分の新作落語を作って挑んでみても離脱率が上がって肝心のオチにたどり着けないのは目に見えている。

では長尺が持ち味の落語は短尺化したプラットフォームと解離して若年層に受け入れ難い文化となってしまうのか。
そんな課題感すら感じながらTikTokを分析していると、落語とTikTokの構造的なある共通点にたどり着いた。
それは、TikTokのミーム性と伝統芸能の受け継がれるシステムだ。
まず、TikTokにおけるミーム性とは「元となるコンテンツと似ている事」で担保される。
例えば、1人のインフルエンサーがとある楽曲に乗せてダンス動画をTikTok上に投稿したとする。
すると、その潮流が次のトレンドとして一気に拡散され、ファン層を始めとする幅広いユーザー達は瞬く間に同じ音源に乗せて振り付けを真似た二次創作(UGC/ユーザージェネレイテッド・コンテンツ)の投稿を連ねる。

そして最終的には、その発端となったインフルエンサーと同じ投稿をする事こそが良しとされるのである。
インフルエンサーのダンスやリップシンク動画を0.5倍速の音源に合わせ忠実に再現する2021年の若者文化。
これはまさに、師匠の動きに目を配り、全く同じように出来るまで習練する伝統芸能の「稽古」とも通ずる部分がある。

このように、絶対的な存在が基準となりその振りに纏う空気が重要視される伝統文化の受け継がれる形態もまた現代の若者文化と共通しているように感じる。

伝統芸能においての評価基準は師匠や一門の系譜を踏襲することだが、この伝承サイクルがよりインスタントに短尺化されているのが現代のミームカルチャーと捉えれば、いつの時代もやっていることはさして変わらないのである。文化の流れは循環する。若者に親しみやすい形態と似通っているという点からも、伝統芸能は再び新たなカルチャーとして受け入れられる可能性だって秘めている。

古くからある既存の文化形態としてではなく、全く新しいものとして落語を若者文化に上手く取り入れていく事で、これから先も伝統を循環させていきたい。

桂 枝之進
PROFILE_

桂 枝之進 / ライター

2001年6月20日生まれ。5歳から落語を聴き始める。関西を拠点に寄席やイベント、メディア等で活動するほか、2020年、落語クリエイティブチーム「Z落語」を立ち上げ、渋谷を拠点にZ世代の視点で落語を再定義、発信するプロジェクトを主宰している。

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